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助産婦の仕事を通して考えたこと、お産や子育て、女性であることを大切にした生き方など気ままにつづります。


by midwife-fumi

麻の葉模様

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先日退院した赤ちゃんの着物が木綿プリントの麻の葉模様でしたので、今日はこのテーマを。

麻は香りが魔除け、虫除け(蚊帳の素材にもなっています)また生育が早いことから、子どもの健康と成長を願い、産着の素材として使われ麻の葉模様が刺繍されてきました。腹帯などと同じく産風俗の一つです。これら風俗の中には現在では母児に悪影響を及ぼす可能性が科学的に研究されたもの、またなんの効果も認められなかったとの結果が出ているものもあります。エビデンス(根拠)を求める時代ですからね。しかし人間は感情の生き物。私自身はこういった産風俗、大事にしていきたいなと思います。エビデンスでの裏付けを求めつつも、麻の葉模様の産着を着せた家族の思いを、くみとれる助産婦になりたいと思うのです。

さて正直言って、病院で麻の葉模様の産着を見かけたのは、そんなに数が多くありません。勤め先では無地の白や黄、青、桃色など施設が準備した長着がありますので退院の時ぐらいしかお家の着物を見ることはありません。自宅出産ですと、上のお子さんが使っていたお古をなどでたまに目にすることがあります。

そして最近は赤ちゃんの晴れ着も本当に多種多彩で、若草物語で4姉妹がかぶるような帽子とフリルのある洋服ですとか、着ぐるみなんかもみられます。全体的に男女問わず白をよくみかけますが、やはり淡い桃色、水色も多いですね。そんな中久しぶりに麻の葉模様を目にしたので驚いたのです。

着物を持ってこられたお母さんに、麻の葉を選んで持ってきたのですかと聞いたところ、そうですとのこと。その方の実のお母さんがが教えてくれたんだそう。「手縫いじゃないんですけど、、、」と照れながら話していた姿が印象的でした。20代前半の若々しい女性です。

昔から大切にされてきたことに自信を持ちづらい祖父母世代、また若い世代もそういったものに重きを置かない人が多いなぁと日々感じて働いていたので、このご家族との出会いになんだかほっとする思いでした。伝えようという気持ちと、受け取ろうという気持ちのある家族なんだろうなと、、、。産着のことだけでなく、日常生活のこまごまとしたこと、生き方なんかもこの家ではきっと上手く伝えられて行くのではと感じました。

2006年度の日本の新生児死亡(出生1000対比)は1.3。多くの子どもが元気に生まれて、その後も生きることができる国で生活していると、麻の葉なんて関係ないと思うかもしれません。時代が変わって新しいものほどいいと考えがちになることもあるかもしれません。しかし、時が変わっても本当に大事なことは劇的に変わったりするわけではないという事実は、数々の歴史が証明しています。年月を経て残ってきた物を大切にし、残し伝えるということ、もっと意識して生きることが今必要だと思うのです。

ウッシー様による麻の葉模様刺し子図案

とても素敵なブログを運営されている女性です。
by midwife-fumi | 2008-03-11 10:01 | お仕事中の出来事